小惑星による恒星の掩蔽観測の最終目標は、小惑星の掩蔽断面と測光観測の組み合わせから、その立体形状を求めることにあります。しかし、1958年の最初の観測成功以来、数百回もの掩蔽の観測に成功しているにもかかわらず、具体的に立体形状が求められた小惑星はありませんでした。
今回、掩蔽観測と測光観測の組み合わせにより、以下の3つの小惑星について立体形状の解析結果が出ましたので、報告します。
●(704) Interamnia
2003年3月23日に日本とハワイで観測された小惑星(704)インテラムニアによるHIP036189(6.58等)の掩蔽は、35ヶ所で観測され、その結果、これまでに小惑星による恒星の掩蔽の観測で得られたものとしては非常に精度の高い、(349.8±0.9km)x(303.7±1.7km)の断面が得られました。
この観測の成功を受け、浜野和天文台と満天星でインテラムニアの追跡測光観測が行われ、掩蔽時の光度曲線が得られました。
http://www2.ocn.ne.jp/~hamaten/704lc.htm
インテラムニアの掩蔽は、過去5回観測されており、このうち1996年12月17日にアメリカで観測された現象は、9ヶ所で観測されていて、(348.6±6.6km)x(284.9±11.9km)の断面が得られていました。また、インテラムニアの測光観測は、何人もの研究者によって行われています。これらの観測データを基にインテラムニアの立体形状を解析した結果、インテラムニアの自転軸はさいだん座の方向にあり(すなわち逆行自転)、3軸の長さは(366.3±3.0km)x(316.2±7.0km)x(299.2±2.2km)であることがわかりました。この結果を元に戻すと、2回の掩蔽時の断面は、
Interamnia1996B.pdf
Interamnia2003B.pdf
であろうと推定されます。
●(704) Alphonsina
2003年12月15日に日本の7ヶ所で掩蔽が観測され、(77.8±0.8km)x(62.0±8.7km)の断面が得られました。そして浜野和天文台と満天星で追跡測光観測が行われました。
http://www2.ocn.ne.jp/~hamaten/925alphonsina.htm
この1週間後の12月22日、ヨーロッパでも掩蔽が観測され、(80.2±1.7km)x(43.7±1.8km)の断面が得られました。これらの結果から立体形状を推定した結果、自転軸はおおいぬ座の方向にあり(すなわち逆行自転)、3軸の長さは(88.4±1.9km)x(54.2±6.4km)x(41.6±1.4km)であることがわかりました。この結果を元に戻すと、2回の掩蔽時の断面は、
Alphonsina2003A2.pdf
Alphonsina2003B2.pdf
であろうと推定されます。
●(375) Ursula
2003年10月19日に日本の13ヶ所で掩蔽が観測され、(196.5±4.4km)x(179.5±2.1km)の断面が得られました。そして浜野和天文台で追跡測光観測が行われました。
http://www2.ocn.ne.jp/~hamaten/375ursula.htm
ウルスラによる掩蔽は、1982年11月15日にアメリカで観測されており、(222±14km)x(194±21km)の断面が得られているとともに、初めての追跡測光観測が行われていました。これらの結果から立体形状を推定した結果、自転軸はおうし座またはへびつかい座の方向にあり(順行か逆行かは決められない)、3軸の長さは(208.0±0.2km)x(193.2±5.9km)x(171.2±9.2km)であることがわかりました。この結果を元に戻すと、2回の掩蔽時の断面は、
Ursula1982B.pdf
Ursula2003B.pdf
であろうと推定されます。
小惑星の掩蔽と測光観測の組み合わせから立体形状が求められたのは、これが世界で最初です。1952年にイギリスの天文学者G.E.テーラーが最初に小惑星による恒星の掩蔽の予報を出して以来、半世紀を経て、世界中の多くの人々の努力の末に、ついにその最終ゴールに到達することができました。
なお、小惑星の立体形状は、探査機による直接観測の他、ハッブル宇宙望遠鏡による観測、地上望遠鏡によるスペックル観測や補償光学による観測、レーダー観測、ライトカープの逆変換などによっても得られますが、数多くある小惑星のうちの少数のもの(全体でも数十個程度)について結果が得られているだけで、まだまだ新しい成果が得られる余地が十分あります。
トップページへ