ライトカーブ解析の手引き


目 次

I はじめに
 1 測光手順の概観
 2 測光ソフト
 3 IRAF について
 4 IRAF の初期設定
 5 IRAF の起動
 6 IRAF の補足
  (1)ファイル名について
  (2)ファイルリストの説明
II 一次処理
 1 画像の確認
 2 フラットフレーム作成
  (1)ダークフレームの合成
  (2)ダークフレームの差し引き
  (3)フラットフレームの規格化
  (4)フラットフレームの合成
 3 オブジェクトフレーム補正
  (1)ダークフレームの合成
  (2)ダークフレームの差し引き
  (3)フラットフレーム補正
  (4)画像の向きの補正
III 測光
 1 比較星の選択
 2 FWHMの測定
 3 パラメータの設定
 4 実際の測光
VI 結果の整理
 1 測光結果の取り出し
 2 比較星の測光結果の確認
 3 小惑星の等級の求め方
 4 小惑星の誤差の求め方
 5 ライトカーブのプロット
 付録:一次処理コマンド一覧

修正記録
2004.11.14 パラメーター設定値を中心に一部修正 at Kiso


I はじめに

1 測光手順の概観

 この「ライトカーブ観測の手引き(測光編)」では、CCD 画像から小惑星の明るさを測定し、ライトカーブのグラフを描くまでを解説している。また、この手引きは測光ソフトとして IRAF の使用を前提としている。

 まず、ここで測光の流れ全体を簡単に解説する。

<一次処理>
 測光の前処理として生画像の補正を行う。手順がやや複雑だが定型的な処理のため、巻末のコマンド一覧や過去の測光のログを活用することにより手順の簡略化が図れる。

<測光パラメータ設定>
 精度の良い測光にはこのパラメータ設定が重要である。観測装置や観測日のシーイングサイズ等によって与える値が異なるが、どのような値を設定するかには決まりがなく、観測者の経験等に負うとこ ろが大きい。この手引きではできる限り具体的に解説している。

<測光>
 一次処理やパラメータ設定が終れば、あとはひたすら根気良く小惑星と比較星の明るさの測定を繰り返すだけである。

<後処理>
 測定結果からライトカーブをプロットするまでをこの手引きの範囲としており、周期解析は別編で解説予定である。

 以上の測光作業の流れをフローチャートに示すと以下のようになる。

2 測光ソフト

小惑星のライトカーブの測光ソフトに必要な条件は以下のとおりである。
 ・画像の演算ができること
 ・アパーチャーフォトメトリをサポートしていること
 ・複数の比較星を測定できること
 ・測光結果を評価するための誤差が求められること
 (さらに個人での使用を前提とすると)
 ・Windows PC において動作すること
 ・無償あるいは廉価で入手できること
  などがあげられる。

 残念ながら現在のところこれらすべての条件を満たすソフトは存在しないようである。(一部の高価な商用ソフトは除く)
 また、条件を満たすソフトがあったとしても、必ず事前に評価を行い、正しい結果が得られることを確認してからでないと研究目的の解析には用いるべきではない。

 このような理由から、Windows PC では動作しないのが最大の弱点であるが、信頼性からも IRAF を用いるのが一番早道だと思われる。この手引きでは IRAF の使用を前提として解説している。

3 IRAF について

 IRAF ( Image Reduction and Analysis Faclilty ) はアメリカの NOAO ( National Optical Astronomy Observatories ) で開発された天文学用の画像解析ソフトで、可視光での画像解析の業界標準となっている。

 IRAF はフリーで配布されており、商用 UNIX の他、Linux 等の PC-UNIX、最近では Mac OS X 用もサポートされている。

 IRAF の入手は http://iraf.nao.ac.jp/iraf/web/ から行える。

 IRAF の入門用の日本語解説は http://jaipa.nao.ac.jp/beginner/index.html を参照されたい。

 IRAF のインストールは http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nishiura/MEMO/pciraf_install_j.html を参照されたい。

 IRAF の各タスクの日本語解説は http://chiron.mtk.nao.ac.jp/swat/iraf/ が便利である。

4 IRAFの初期設定

 IRAF のインストール後、まず初期設定を行なう必要がある。最初に IRAF を実行するためのホームディレクトリを決める。(この例では iraf とする。今後 IRAF は必ずそのディレクトリで起動する)
 次に、そのディレクトリに移動して、以下のように mkiraf コマンドを実行する。

 mkiraf を実行すると IRAFで使用するターミナルのタイプを聞かれるので xgterm と入力する。(もちろん xgterm がインストールされてることが前提)
 mkiraf 実行後、カレントディレクトリに login.cl という初期設定ファイルが作成される。

 次に login.cl ファイルの中身を必要に応じて修正する。使用する CCD カメラの画素数が 800x800 ピクセル以上の場合は、次の行をコメント行を示す # を削除して、800 の部分を CCD カメラの画素数に修正する。

 #set    stdimage        = imt800
           ↓
 set    stdimage        = imt1024

5 IRAF の起動

 IRAFを起動する前に、次の2つのプログラムを起動する必要がある。 まず FITS 画像のビューワの ds9 を起動する。次に、IRAF の専用ターミナル xgterm を起動する。(IRAF は必ずこの xgterm から起動すること)

 xgterm のウインドウが開かれたら、自分で決めた IRAF のホームディレクトリに移動してから cl コマンドを入力する。

 IRAF が起動して次のようなメッセージが表示されればOKである。もし、このようなメッセージが表示されない場合は、IRAF のホームディレクトリ以外で起動した可能性があるので、正しいディレクトリから起動し直すこと。

6 IRAF の補足

(1)ファイル名について

 IRAF では FITS ファイルの標準の拡張子は .FITS だが、MS-DOS の拡張子3桁の場合、必ず .FIT としないと IRAF で読めないので注意する こと。

(2)ファイルリストの説明

 IRAF で複数の画像ファイルを一括して処理する場合、ファイルリストを用いる。ファイルリストとは、以下のとおりテキストファイルの各行にファイル名を記述したものを言う。

 例
 kcd49232.fits
 kcd49233.fits
 kcd49234.fits
 kcd49235.fits
 kcd49236.fits

 このようなファイルリストを事前にエディタ等で用意しておく。実際に使用する場合は、以下の使用例のようにリストファイルの前に @ マークを付けることでリストファイルであることを IRAF に教える。

<使用例>
cl> imcombine @dark.list dark.fits combine=median

II 一次処理

1 画像の確認

 解析を始める前に、すべての画像を表示させて内容を確認する。画像の統計量は発見できないおかしな画像もあり得るので、必ず目でも確認を行う習慣をつけるべきである。

 IRAF での画像の表示方法

cl> disp file_name n

  ただし、n は 1〜4 の数字で ds9 などの画像フレーム番号

disp コマンドを実行すると、以下のように sd9 ウインドウに画像が表示される。(この例は ST-6 の画像)

【2つの画像をブリンクさせて小惑星を探す方法】

まず、 以下のとおり disp コマンドのフレーム番号を変えて実行する。

 cl> disp file_name1 1
 cl> disp file_name2 2

次に、sd9 の上部メニュー「Frame」→「Blink Frames」をクリックするとブリンクを開始する。ブリンクを停止するのは 「Frame」→「Single Frame」をクリックする。
ブリンクのスピードは sd9 の上部メニュー「Frame」→「Blink Interval」から選択できる。

2 フラットフレーム作成

(1)ダークフレームの合成

 フラットフィールドの補正用ダークフレームの合成をする。

 まず、ダークフレームの統計量を調べて異常値のフレームがないことを確認する。異常な値のフレームは合成に用いない。ただし、ここで @flat-dark.list とはリストファイルで、flat-dark.list というファイルに合成するダークフレームのファイル名を書き込んでおく。

cl> imstat @flat-dark.list
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
           d3s001.fit     90750     137.6     13.32      105.      382.
           d3s002.fit     90750     137.2     13.34      104.      381.
           d3s003.fit     90750     137.2     13.32      106.      383.
           d3s004.fit     90750     137.2     13.31      105.      388.
           d3s005.fit     90750     137.1     13.31      106.      390.
           d3s006.fit     90750     137.1     13.33      106.      387.
           d3s007.fit     90750     137.1     13.32      106.      383.
           d3s008.fit     90750     137.1     13.33      105.      391.
           d3s009.fit     90750     137.1     13.31      104.      382.
           d3s010.fit     90750     137.1     13.34      105.      395.

 次に、フラットフィールドの補正用ダークフレーム(10 枚程度)をメディアンで合成する。

cl> imcombine @flat-dark.list flat-dark.fits combine=median

 @flat-dark.list はリストファイルで、flat-dark.list というファイルに合成するダークフレームのファイル名を書き込んでおく。

 flat-dark.fits は合成した画像が出力されるファイル名である。出力ファイル名には必ず .fits という拡張子を指定すること。

(2)ダークフレームの差し引き

すべてのフラットフィールドから、(1)で合成したダークフレームを差し引く。

cl> imarith @flat.list - flat-dark.fits @flat-sub.list

 @flat.list はリストファイルで、flat.list というファイルに取得したすべてのフラットフィールドの画像ファイル名を書き込んでおく。

 flat-dark.fits は(1)で出力したファイル名を指定する。

 @flat-sub.list はリストファイルで、flat-sub.list というファイルにダークフレーム差し引き後のファイル名を書き込んでおく。

※ このリストファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに s を自動で付けて出力とする。このコマンドは UNIX の cat コマンドと sed コマンドを利用しているが、IRAF の中でこれらのコマンドを使用する場合は、コマンド行の先頭に ! マークを付ける必要があるので注意すること。

cl> !cat flat.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > flat-sub.list

このコマンドによりファイルが以下のように作成される。

   object.list                 object-sub.list
  kcd49223.fits                kcd49223s.fits  
  kcd49224.fits                kcd49224s.fits 
  kcd49225.fits       →       kcd49225s.fits 
  kcd49226.fits                kcd49226s.fits 
  kcd49227.fits                kcd49227s.fits 

※ FITSファイルの拡張子が .fit の3文字である場合は次のコマンドを用いる。

cl> !cat flat.list | sed -n 's/.fit/s.fit/p' > flat-sub.list

(3)フラットフレームの規格化

 ドームフラットの照明ランプの明るさの変動により、複数取得したフラットフレームの平均カウントに以下のようにばらつきが生ずる。このため、フラットフレームを合成する前に、各フラットフレームの規格化を行う。
cl> imstat @flat.list  
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
         df3si001.fit     90750    24209.     443.8    21027.    24901.
         df3si002.fit     90750    34169.     625.3    29614.    35092.
         df3si003.fit     90750    31383.     577.7    27416.    32251.
         df3si004.fit     90750    29029.     536.5    25232.    29832.
         df3si005.fit     90750    29082.     540.9    25330.    29894.
         df3si006.fit     90750    28798.     538.6    25148.    29624.
         df3si007.fit     90750    23099.     432.3    20053.    23757.
         df3si008.fit     90750    23335.     438.9    20310.    24023.
         df3si009.fit     90750    30250.     572.1    26284.    31150.
         df3si010.fit     90750    29405.     558.3    25628.    30556.
 規格化は IRAF の normalize コマンドにより行う。ただし、normalize コマンドは元の画像に結果を上書きしてしまうため注意が必要である。この手引きの手順に従うと、ダークを差し引いたファイルを規格化し、オリジナルのフラットフレームは保存されるのでその心配ない。

 まず normalize コマンドを使えるように以下のコマンドを入力してから、(プロンプトが変化することに注意) normalize コマンドを実行する。

 cl> noao
 no> imred
 im> generic
 ge> normalize @flat-sub.list

 ここで @flat-sub.list はリストファイルで、(2)で出力に指定したリストファイルを指定する。

 規格化された結果、以下のようにすべてのフラットフィールドの平均カウントが 1.0 になっていることがわかる。

imstat @fla-sub.list 
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
        df3si001s.fit     90750        1.   0.01839    0.8668     1.029
        df3si002s.fit     90750        1.   0.01834    0.8654     1.027
        df3si003s.fit     90750        1.   0.01845    0.8722     1.028
        df3si004s.fit     90750        1.   0.01853    0.8677     1.028
        df3si005s.fit     90750        1.   0.01864    0.8695     1.028
        df3si006s.fit     90750        1.   0.01875    0.8717     1.029
        df3si007s.fit     90750        1.   0.01877    0.8662     1.029
        df3si008s.fit     90750        1.   0.01886    0.8685      1.03
        df3si009s.fit     90750        1.   0.01896    0.8674      1.03
        df3si010s.fit     90750        1.   0.01903    0.8701     1.039

※ フラット処理の規格化の順序について詳しく知りたい方は フラットフィールドの規格化のページをご参照のこと。

(4)フラットフレームの合成

規格化したフラットフレームをメディアンで合成する。

ge> imcombine @flat-sub.list flat.fits combine=median

 @flat-sub.list はリストファイルで、(3)で規格化した flat-sub.list を指定する。

 flat.fits とは結果が出力されるファイル名である。出力ファイル名には必ず .fits という拡張子を指定すること。

3 オブジェクトフレーム補正

(1)ダークフレームの合成

 オブジェクトフレーム(小惑星を撮像したフレーム)の補正用ダークフレームを合成する。

 まず、ダークフレームの統計値を調べて異常値のフレームがないことを確認する。異常な値のフレームは合成に用いない。ただし、ここで @obj-dark.list とはリストファイルで、obj-dark.list というファイルに合成するダークフレームのファイル名を書き込んでおく。

ge> imstat @obj-dark.list
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
         d300s001.fit     90750     411.5     432.8      179.    12424.
         d300s002.fit     90750     411.2     432.4      178.    12384.
         d300s003.fit     90750      411.     432.2      178.    12360.
         d300s004.fit     90750     410.5     431.7      178.    12348.
         d300s005.fit     90750     414.1     433.9      178.    12468.
         d300s006.fit     90750     425.9      437.      189.    12516.
         d300s007.fit     90750     418.6     432.9      185.    12344.
         d300s008.fit     90750     416.9     432.6      183.    12344.
         d300s009.fit     90750     414.8     430.7      180.    12296.
         d300s010.fit     90750     415.9     433.8      181.    12512.

 次に、オブジェクトフレーム補正用ダークフレーム(10 枚程度)をメディアンで合成する。

ge> imcombine @obj-dark.list obj-dark.fits combine=median

 @obj-dark.list はリストファイルで、obj-dark.list というファイルに合成するダークフレームのファイル名を書き込んでおく。

 obj-dark.fits とは結果が出力されるファイル名である。出力ファイル名には必ず .fits という拡張子を指定すること。

(2)ダークフレームの差し引き

 すべてのオブジェクトフレームから(1)で合成したダークフレームを差し引く。

ge> imarith @object.list - obj-dark.fits @object-sub.list

 @object.list はリストファイルで、object.list というファイルに小惑星を撮像したすべての画像ファイル名を書き込んでおく。

 obj-dark.fits は(1)で出力したファイル名を指定する。

 @object-sub.list はリストファイルで、object-sub.list というファイルにダークフレーム差し引き後のファイル名を書き込んでおく。このファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに s を自動で付けて出力とする。

cl> !cat object.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > object-sub.list

(3)フラットフレーム補正

合成済みのフラットフレームで、すべてのオブジェクトフレームを割る。

ge> imarith @object-sub.list / flat.fits @object-flat.list

 @object-sub.list はリストファイルで、(2)でダークを差し引いた object-sub.list を指定する。

 flat-dark.fits は 3の(4)で出力したフラットフレームのファイル名を指定する。

 @object-flat.list はリストファイルで、object-flat.list というファイルにフラットフレーム補正後のファイル名を書き込んでおく。このファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに f を自動で付けて出力とする。

cl> !cat object.list | sed -n 's/.fits/f.fits/p' > object-flat.list

(4)画像の向きの補正

 CCD カメラの画像が、実際の星空に対して上下逆さまや裏返しとなる場合がある。このような場合は IRAF の imcopy コマンドを用いて、正しい向きの画像に補正をする。  CCD カメラの取り付け部分が回転できる場合は、画像を表示した際に上が北になるように位置決めしておくと良い。

 具体的には、筆者の ST-6 が出力する FITS 画像は裏返しになる。また、ドイツ式赤道儀では、望遠鏡が赤道儀の東側にあるか、西側にあるかによって画像が逆さまになるため補正が必要となる。

(参考)筆者の観測環境での ST-6 画像の補正方法

・Telescope East
  imcopy image-in.fits[*,-*] image-out.fits
・Telescope West
  imcopy image-in.fits[-*,*] image-out.fits

※ この補正コマンドをまとめてリストファイルで実行する場合は、次のコマンドが使える。

cl> !cat object.list | sed -n 's/.fit/f.fit\[\*,-\*]/p' > object_corr.list
cl> !cat object.list | sed -n 's/.fit/c.fit/p' > object_c.list
cl> imcopy @object_corr.list @object_c.list

※ 向きが補正された画像のファイル名の後ろには c が自動的に付される。また、コマンド中に * を指定する場合は、* の直前に \ (バックスラッシュ)を入力する。"[\*,-\*]" の部分は自分の環境に合わせて修正する。

III 測光

1 比較星の選択

 比較星はオブジェクトフレーム内の恒星から複数個(できれば10個程度)を選択する。比較星の条件は以下のとおり。
・ ピークがリニアリティーの範囲内にあること
・ 十分なカウントがあること
・ 周囲に暗い恒星がないこと
・ すべてのオブジェクトフレームに共通に写っていること
・ 理想的には太陽と同じカラーの星であること

※リニアリティーの詳細はリニアリティーのページを参照。

※測光用フィルターを使用しないで観測をした場合の比較星の選択方法についてはノーフィルター観測についてを参照のこと。

【画面のハードコピー】

 測光を効率的に行うために、ds9 に表示されている画像のハードコピーを取って比較星にマークを付けておくと良い。UNIX での画面のハードコピーの取得方法は次のとおり。

 xterm や kterm 上で以下のとおり xwd コマンドを実行する。出力ファイルを リダイレクトで指定する。もし、IRAF の中で実行する場合は コマンドの先頭に ! マークを付けること。

 xwd コマンドを実行すると、マウスカーソルが大きめの十字に変わる。このマウスカーソルをハードコピーを取りたいウインドウ(この場合は ds9 )に重ねて、マウスの左ボタンをクリックすると、ピッピッという音がして、ウインドウが xwd 形式の画像として指定したファイルに出力される。これを xv 等の画像ソフトで適当なフォーマットに変換してから印刷する。
(この Web に貼り付けているようなウインドウのフレームも一緒に取得したい場合は xwd -frame > test.xwd とすれば良い)

2 FWHMの測定

 まず、imexamine コマンドを用いて、星像のFWHM(半値幅)を求める。

cl> disp fie_name
cl> imexa fie_name

測定する星像にマウスカーソルを当てて r キー(小文字の R )を押すと、以下のように画像のプロファイルが表示される。

 また、測定する星像にマウスカーソルを当てて a キーを押すと xgterm ウインドウに以下の情報が表示される。比較星を a キーにより次々に測定して、そのFWHMの平均値を求める。

 IRAF の場合 FWHM の値として ENCLOSED, MOFFAT, DIRECT の3種類が表示される。このうちどの値を採用するかはいろいろな流儀があるので、自分のやり方を決めておくのが良いだろう。私の場合は MOFFAT の値をざっと平均している。このサンプル画面の場合では 1.9 ピクセルとしている。

測定が終わったら、画像にマウスカーソルを置いたまま、q キーを押して imexamine を終了する。

imexamine の主なコマンド(他にも役立つコマンドがある。実際にやってみれば理解できるであろう)

 a: apertuer sum,moment parameters,and gaussian fit
 c: column plot
 l: line plot
 e: contour plot
 h: histogram plot
 q: quit
 r: radial profile plot
 s: surface plot

3 パラメータの設定

 測光は IRAF の apphot コマンドを用いる。この apphot は多くのパラメータを適切に設定することが必要である。apphot では5つの画面を切替えてパラメータの編集を行う。ここでは最初に phot パラメータ画面に入り、そこから別の画面に移行する方法を紹介する。次の IRAF コマンドでパラメータの編集を行う。

 まず aphot コマンドが使えるように以下のコマンドを入力してから、epar phot コマンドを実行する。

cl> noao
no> digi
di> apphot
ap> epar phot

 まずこの画面では radplot の初期値が no となっているので、yes に修正する。

 次に画面の datapar の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e (コロンと e )と入力すると下の datapar の編集画面に移行する。

 この画面では fwhmpsf の値として imexamine で調べた FWHM の平均値を入力する。

 さらに、使用したCCDカメラの以下のデータを登録する。
 ・readnoi 読み出し雑音(単位はelecton)
 ・epadu ゲイン
 ・itime 積分時間

 ただし、画像のFITSファイルのヘッダにこれらの値が記録されている場合、個々に値を入力せずに、ヘッダのキーワードを指定するだけでヘッダから自動的に値が読み込まれるので便利である。その場合は、ccdread、gain、exposur にそれぞれのヘッダのキーワードを入力する。このサンプル画面はキーワードではなく値を直接入力した例である。

 次に datamin と datamax を入力する。datamax はリニアリティー の保証範囲をカウントで入力する。保証範囲が不明な場合は30000くらいを入力するのが無難であろう。datamin は、読み出し雑音の3倍くらいの負の値を入力すればよい。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

 次に画面の centerp の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の centerp の編集画面に移行する。

 この画面では cbox の値として FWHM の 2 倍程度の値を入力する。maxshif は 2 ピクセルを入力する。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

 次に画面の fitskyp の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の fitskyp の編集画面に移行する。

 この画面では annulus (スカイの内経)と dannulu (スカイの幅)を入力する。annulus はこの次の画面で入力する apertur サイズに 1.0 を加えた値とする。dannulu は 3〜5 の範囲の値とする。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

次に画面の photpar の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の photpars の編集画面に移行する。

 この画面では apertur の値を入力として FWHM の平均値の 1.5 倍の値を入力する。ただし、小惑星が移動により楕円に写っている場合などは、1.5 倍より若干大きめにする。

 編集が終ったら :q を2回押すとパラメータ編集を終了する。

4 実際の測光

 パラメータの設定が終了したら apphot コマンドを用いて測光を行う。

ap> phot image.fits

 画像の測定すべき星像にマウスカーソルを当てて、スペースキーを押すと、以下のような星像のプロファイルが表示される。

 また、IRAF を実行している xgterm には簡単な測定結果が表示 されて、測定がうまく行われているかの確認ができる。

 ok の部分が err となった場合は、カーソルが星にうまく当たらずにセンタリングに失敗したり、明るい星で datamax の値を越えた場合など何らかの問題があるのでチェックする必要がある。

測光を終了する時は、画面にマウスカーソルを置いて q キーを押し、続いて xgterm にマウスカーソルを置いて q キーを押す。

 より詳細な測光結果が以下のような名称のファイルに出力される

 w153040c.fits という画像ファイルを3回測定した場合

 w153040c.mag.1
 w153040c.mag.2
 w153040c.mag.3

 このような名称のファイルが作成される。測光を繰り返した場合、測光結果ファイルは上書きされずに、ファイル名の最後の連番が繰り上がる。このため、測光に失敗てやり直す場合は、ファイル名が変わってしまう。後処理の自動化等でこれを嫌う場合は、失敗した時はこのファイルを削除してからやり直すと良い。

VI 結果の整理

1 測光結果の取り出し
 測光結果ファイルから必要な項目を取り出すには以下の IRAF コマンドが利用できる。

cl> txdump *.mag.1 XCENTER,YCENTER,FLUX,MAG,MERR yes

 また、時刻の情報を FITS ファイルのヘッダから取り出して、結果のデータファイルを作成する。

 これらの処理を行うプログラム(スクリプト)を用意すると効率的に作業が行える。

2 比較星の測光結果の確認

 *.mag.1 から得られた比較星の等級をそのままグラフにプロットする。このグラフから比較星の光度変化がわかり、おかしな変化をしている場合はその比較星をリジェクトする。

3 小惑星の等級の求め方

 任意の比較星と小惑星との等級差を小惑星の相対等級とする。または、すべての比較星の平均値との差を相対等級とする方法もある。(著者は常に後者のやり方をしている)

4 小惑星の誤差の求め方

 誤差は apphot の結果で得られるが、小惑星の誤差だけでなく比較星の誤差を加味した以下の式で求めることが望ましい。

 誤差 = √(x^2 + Σ(y^2)/n)

 ただし、x は小惑星の測定誤差、y は比較星の測定誤差、n は比較星の個数

5 ライトカーブのプロット

 得られた相対等級をプロットしてライトカーブを作成する。縦軸は比較星との等級差を、横軸は周期が求まっている場合は周期の位相、それ以外は観測時刻のUTにする。また、測定時の誤差をもとにエラーバーを付けるようにする。


一次処理コマンド一覧

この手引きに掲載した一次処理の各種コマンドを実行順に並べたものである。各自の環境に合わせて修正して利用して欲しい。

・フラットフレーム作成
 flat-dark.listの作成
 imcombine @flat-dark.list flat-dark.fits combine=median
 flat.listの作成
 !cat flat.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > flat-sub.list
 imarith @flat.list - flat-dark.fits @flat-sub.list
 noao
 imred
 generic
 normalize @flat-sub.list
 imcombine @flat-sub.list flat.fits combine=median

・オブジェクトフレーム補正
 (ダークフレーム合成)
 obj-dark.listの作成
 imcombine @obj-dark.list obj-dark.fits combine=median

 (ダークフレーム差し引き)
 object.listの作成
 !cat object.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > object-sub.list
 imarith @object.list - obj-dark.fits @object-sub.list

 (フラットフレーム補正)
 !cat object.list | sed -n 's/.fits/f.fits/p' > object-flat.list
 imarith @object-sub.list / flat.fits @object-flat.list

 (向きの補正)
 !cat object.list | sed -n 's/.fit/f.fit\[\*,-\*]/p' > object_corr.list
 !cat object.list | sed -n 's/.fit/c.fit/p' > object_c.list
 imcopy @object_corr.list @object_c.list

   参考文献:IRAFクックブック「APPHOT」尾久土正己、天文情報処理研究会編


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