ライトカーブ解析の手引き


目 次

I はじめに
 1 測光手順の概観
 2 測光ソフト
 3 IRAF について
 4 IRAF の初期設定
 5 IRAF の起動
 6 IRAF の補足
  (1)ファイル名について
  (2)ファイルリストの説明
II 一次処理
 1 画像の確認
 2 フラットフレーム作成
  (1)ダークフレームの合成
  (2)ダークフレームの差し引き
  (3)フラットフレームの規格化
  (4)フラットフレームの合成
 3 オブジェクトフレーム補正
  (1)ダークフレームの合成
  (2)ダークフレームの差し引き
  (3)フラットフレーム補正
  (4)画像の向きの補正
III 測光
 1 比較星の選択
 2 FWHMの測定
 3 パラメータの設定
 4 実際の測光
VI 結果の整理
 1 測光結果の取り出し
 2 比較星の測光結果の確認
 3 小惑星の等級の求め方
 4 小惑星の誤差の求め方
 5 ライトカーブのプロット
 付録:一次処理コマンド一覧

修正記録
2004.11.14 パラメーター設定値を中心に一部修正 at Kiso

2011.3. Mac OS ベースに大幅加筆


I はじめに

1 測光手順の概観

 この「ライトカーブ観測の手引き(測光編)」では、CCD 画像から小惑星の明るさを測定し、ライトカーブのグラフを描くまでを解説している。また、この手引きは測光ソフトとして IRAF の使用を前提としている。

 まず、ここで測光の流れ全体を簡単に解説する。

<一次処理>
 測光の前処理として生画像の補正を行う。手順がやや複雑だが定型的な処理のため、巻末のコマンド一覧や過去の測光のログを活用することにより手順の簡略化が図れる。

<測光パラメータ設定>
 精度の良い測光にはこのパラメータ設定が重要である。観測装置や観測日のシーイングサイズ等によって与える値が異なるが、どのような値を設定するかには決まりがなく、観測者の経験等に負うとこ ろが大きい。この手引きではできる限り具体的に解説している。

<測光>
 一次処理やパラメータ設定が終れば、あとはひたすら根気良く小惑星と比較星の明るさの測定を繰り返すだけである。

<後処理>
 測定結果からライトカーブをプロットするまでをこの手引きの範囲としており、周期解析は別編で解説予定である。

 以上の測光作業の流れをフローチャートに示すと以下のようになる。

2 測光ソフト

本手引きでは、小惑星ライトカーブの測光ソフトとしてIRAFを前提として説明している。
他にWindowsの場合はすばる望遠鏡画像解析ソフトとして無料配布されている「マカリィ」Makali`iも利用できるだろう。(筆者は使用したことはない)

3 IRAF について

 IRAF ( Image Reduction and Analysis Faclilty ) はアメリカの NOAO ( National Optical Astronomy Observatories ) で開発された天文学用の画像解析ソフトで、可視光での画像解析の業界標準となっている。

 IRAF はフリーで配布されており、商用 UNIX の他、Linux 等の PC-UNIX、Mac OS X 用がサポートされている。この手引きでは Mac-OS X 用を用いている。

 IRAF の入手は http://iraf.nao.ac.jp/iraf/web/ から行える。

 IRAF の入門用の日本語解説は http://jaipa.nao.ac.jp/beginner/index.html を参照されたい。

 IRAF のインストールは http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nishiura/MEMO/pciraf_install_j.html を参照されたい。

 IRAF の各タスクの日本語解説は http://chiron.mtk.nao.ac.jp/swat/iraf/ が便利である。

4 IRAFの初期設定

 IRAF のインストール後、まず初期設定を行なう必要がある。最初に IRAF を実行するためのホームディレクトリを決める。(この例では iraf とする。今後 IRAF は必ずそのディレクトリで起動する)
 次に、そのディレクトリに移動して、以下のように mkiraf コマンドを実行する。

 mkiraf を実行すると IRAFで使用するターミナルのタイプを聞かれるので xgterm と入力する。(もちろん xgterm がインストールされてることが前提)
 mkiraf 実行後、カレントディレクトリに login.cl という初期設定ファイルと、パラメータが保存される uprm というディレクトリが作成される。


 次に login.cl ファイルの中身を必要に応じて修正する。

 使用する CCD カメラの画素数が 800x800 ピクセル以上の場合は、次の行をコメント行を示す # を削除して、800 の部分を CCD カメラの画素数に修正する。例えば 1024x1024 ピクセルの場合は次のように修正する。

 #set    stdimage        = imt800
           ↓
 set    stdimage        = imt1024

 使用する CCD カメラが出力する FITS ファイルの拡張子が、fits,fit 以外は修正が必要となる。例えば拡張子として FIT というファイルを IRAF で読むためには、次の行をコメント行を示す # を削除して次のように修正する。

#set    imextn          = "oif:imh fxf:fits,fit plf:pl qpf:qp stf:hhh,??h"
           ↓
set     imextn          = "oif:imh fxf:fits,fit,FIT plf:pl qpf:qp stf:hhh,??h"

 最後に、測光で頻繁に使う IRAF のタスクが簡単に呼び出せるよう、以下の修正をすることをお勧めする。login.cl ファイルの最後の箇所、noao で始まる行と keep の行との間にを次のとおり4行を追加する。

修正前

noao            # optical astronomy packages

keep

修正後

noao            # optical astronomy packages
  imred
    generic
  digi
    app
keep

5 IRAF の起動

 IRAFを起動する前に、次の2つのプログラムを起動する必要がある。 まず FITS 画像のビューワの ds9 を起動する。次に、IRAF の専用ターミナル xgterm を起動する。(起動の順序は問わない)

 xgterm のウインドウが開かれたら、自分で決めた IRAF のホームディレクトリに移動してから cl コマンドを入力する。(cl コマンドは必ず xgterm から起動すること)

 IRAF が起動して次のようなメッセージが表示されればOKである。もし、このようなメッセージが表示されない場合は、IRAF のホームディレクトリ以外で起動した可能性があるので、正しいディレクトリから起動し直すこと。

6 IRAF の補足

(1)Enhanced CL について

 従来の cl は、入力を間違えると修正ができず、また過去のコマンドを呼び出すのも使い勝手が悪く、解析作業のネックとなっていた。最近のリリースでは、補完機能やヒストリ機能が tcsh や bash のようにできるようになった。cl のプロンプトが ecl となっていることでそれがわかる。まだ古いバージョンをお使いの方は最新版を利用することを強くお勧めする。

(2)ファイルリストの説明

 IRAF で複数の画像ファイルを一括して処理する場合、ファイルリストを用いる。ファイルリストとは、以下のとおりテキストファイルの各行にファイル名を記述したものを言う。

 例
 kcd49232.fits
 kcd49233.fits
 kcd49234.fits
 kcd49235.fits
 kcd49236.fits

 このような内容のファイルを事前にエディタ等で用意しておく。実際に使用する場合は、以下の使用例のようにファイルの前に @ マークを付けることでリストファイルであることを IRAF に教える。

<使用例>
cl> imcombine @dark.list dark.fits combine=median

7 Mac OS について

 IRAF を動作させる環境として、Mac OS X はお勧めできる。IRAF や xgterm は X11 上で動作する。他のアプリケーションとのデータ連携もスムーズであり、また天文学で多く利用されている PostScript もOSレベルでサポートしているので大変便利である。Excle, Word との高い互換性さえ求めなければ、研究用プラットホームとしても適している。ただし、IRAF のインストールは Mac OS 用のインストーラーが用意されておらず、他の UNIX と同様にコマンドベースでの作業になるので UNIX の基礎知識を必要とする。

 DS9 の最新バージョンは Mac OS X 上で直接動作する。これらは簡単なインストラーが用意されている。また、少し古いバージョンは X11 上で動作するものもある。どちらが良いかは好みの問題であるが、筆者は使い慣れた古いバージョンで X11 上で動作する Ver 5.2 を利用している。

II 一次処理

1 画像の確認

 解析を始める前に、すべての画像を表示させて内容を確認する。画像の統計量は発見できないおかしな画像もあり得るので、必ず目でも確認を行う習慣をつけるべきである。

 IRAF での画像の表示方法

cl> disp file_name n

  ただし、n は 1〜4 の数字で ds9 などの画像フレーム番号

disp コマンドを実行すると、以下のように sd9 ウインドウに画像が表示される。(この例は STL-1001E の画像)

【 DS9 での画像表示の向き】

DS9 で表示するとき、視野の北が上になるようにするには、DS9 の上部メニュー「Zoom」の 「Invert X」又は 「Invert Y」、さらには Zoom メニューの90度毎の角度を選択してみると良い。

【2つの画像をブリンクさせて小惑星を探す方法】

まず、 以下のとおり disp コマンドのフレーム番号を変えて2枚の画像を表示する。

 cl> disp file_name1 1
 cl> disp file_name2 2

次に、sd9 の中段メニュー「Frame」→「blink」をクリックするとブリンクを開始する。ブリンクを停止するのは 中段メニュー「Frame」→「single」をクリックする。
ブリンクのスピードは sd9 の上部メニュー「Frame」→「Blink Interval」から選択できる。

または、sd9 の中段メニュー「Frame」→「next」をクリックするたびに画像がブリンクする方法もある。

2 フラットフレーム作成

(1)ダークフレームの合成

 フラットフィールドの補正用ダークフレームの合成をする。

 まず、ダークフレームの統計量を調べて異常値のフレームがないことを確認する。異常な値のフレームは合成に用いない。ただし、ここで @dark5sec.list とはリストファイルで、dark5sec.list というファイルに5秒積分のダークフレームのファイル名を書き込んだものである。

dark5sec.list ファイルの内容

% cat dark5sec.list
stl.00040056.DARK.FIT
stl.00040057.DARK.FIT
stl.00040058.DARK.FIT
stl.00040059.DARK.FIT
stl.00040060.DARK.FIT
stl.00040061.DARK.FIT
stl.00040062.DARK.FIT
stl.00040063.DARK.FIT
stl.00040064.DARK.FIT
stl.00040065.DARK.FIT

統計量を調べる imstat コマンドの実行結果

ecl> imstat @dark5sec.list
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
 stl.00040056.DARK.FIT   1048576     125.5     19.96       36.     4432.
 stl.00040057.DARK.FIT   1048576     126.5     18.88       44.     2329.
 stl.00040058.DARK.FIT   1048576     127.5     19.01       44.     1134.
 stl.00040059.DARK.FIT   1048576     126.4     19.14       28.     1874.
 stl.00040060.DARK.FIT   1048576     127.4     19.47       40.     4112.
 stl.00040061.DARK.FIT   1048576     127.4     20.75       42.     6866.
 stl.00040062.DARK.FIT   1048576     125.2     19.66       36.     2685.
 stl.00040063.DARK.FIT   1048576     126.3     19.19       39.     2355.
 stl.00040064.DARK.FIT   1048576     126.3     19.01       38.     2260.
 stl.00040065.DARK.FIT   1048576     125.1     19.37       38.     2933.

 次に、フラットフィールドの補正用ダークフレーム(10 枚程度)をメディアンで合成する。

ecl> imcombine @dark5sec.list dark5sec.FIT combine=median

 dark5sec.FIT は合成した画像が出力されるファイル名である。出力ファイル名の拡張子は任意。この手引きでは .FIT で統一している。

(2)ダークフレームの差し引き

すべてのフラットフィールドから、(1)で合成したダークフレームを差し引く。

ecl> imarith @flat.list - dark5sec @flat_sub.list

 @flat.list はリストファイルで、flat.list というファイルに取得したすべてのフラットフィールドの画像ファイル名を書き込んでおく。

flat.list ファイルの内容

% cat  flat.list
stl.00040066.FLAT.FIT
stl.00040067.FLAT.FIT
stl.00040068.FLAT.FIT
stl.00040069.FLAT.FIT
stl.00040070.FLAT.FIT
stl.00040071.FLAT.FIT
stl.00040072.FLAT.FIT
stl.00040073.FLAT.FIT
stl.00040074.FLAT.FIT
stl.00040075.FLAT.FIT

 dark5sec は(1)で出力したファイル dark5sec.FIT を指定する。ただし、拡張子は省略できる。

 @flat-sub.list はリストファイルで、flat-sub.list というファイルにダークフレーム差し引き後のファイル名を書き込んでおく。

flat_sub.list ファイルの内容

% cat  flat_sub.list
stl.00040066.FLATs.FIT
stl.00040067.FLATs.FIT
stl.00040068.FLATs.FIT
stl.00040069.FLATs.FIT
stl.00040070.FLATs.FIT
stl.00040071.FLATs.FIT
stl.00040072.FLATs.FIT
stl.00040073.FLATs.FIT
stl.00040074.FLATs.FIT
stl.00040075.FLATs.FIT

※ このリストファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに s を自動で付けて出力とする。このコマンドは UNIX の cat コマンドと sed コマンドを利用しているが、IRAF の中でこれらのコマンドを使用する場合は、コマンド行の先頭に ! マークを付ける必要があるので注意すること。(xterm で実行すれば当然ながら!マークは不要)

ecl> !cat flat.list | sed -n 's/.FIT/s.FIT/p' > flat_sub.list

このコマンドによりファイルが以下のように作成される。

 flat.list                   flat_sub.list
 stl.00040066.FLAT.FIT       stl.00040066.FLATs.FIT
 stl.00040067.FLAT.FIT       stl.00040067.FLATs.FIT
 stl.00040068.FLAT.FIT       stl.00040068.FLATs.FIT
 stl.00040069.FLAT.FIT       stl.00040069.FLATs.FIT
 stl.00040070.FLAT.FIT   →  stl.00040070.FLATs.FIT
 stl.00040071.FLAT.FIT       stl.00040071.FLATs.FIT
 stl.00040072.FLAT.FIT       stl.00040072.FLATs.FIT
 stl.00040073.FLAT.FIT       stl.00040073.FLATs.FIT
 stl.00040074.FLAT.FIT       stl.00040074.FLATs.FIT
 stl.00040075.FLAT.FIT       stl.00040075.FLATs.FIT

※ FITSファイルの拡張子が .fits である場合は次のコマンドを用いる。

ecl> !cat flat.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > flat-sub.list

(3)フラットフレームの規格化

 ドームフラットの照明ランプの明るさの変動により、複数取得したフラットフレームの平均カウントにはばらつきが生ずる。imstat コマンドで統計量を求め MEAN の値を見ると、安定した光源を用いているものの若干ばらつきがあることがわかる。
ecl> imstat @flat_sub.list
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
 stl.00040066.FLATs.FIT   1048576    22210.      709.    17919.    24837.
 stl.00040067.FLATs.FIT   1048576    22598.     721.4    18245.    28456.
 stl.00040068.FLATs.FIT   1048576    22857.     729.6    18482.    24896.
 stl.00040069.FLATs.FIT   1048576    22964.     733.2    18402.    24770.
 stl.00040070.FLATs.FIT   1048576    22933.      732.    18518.    24694.
 stl.00040071.FLATs.FIT   1048576    22838.     729.3    18389.    30825.
 stl.00040072.FLATs.FIT   1048576    22673.     724.7    18108.    24462.
 stl.00040073.FLATs.FIT   1048576    22487.     718.4    18086.    27396.
 stl.00040074.FLATs.FIT   1048576    22223.     710.2    17846.    26267.
 stl.00040075.FLATs.FIT   1048576    22020.     703.9    17663.    23807.

 このため、フラットフレームを合成する前に、各フラットフレームの規格化を行う。

 規格化は IRAF の normalize コマンドにより行う。ただし、normalize コマンドは元の画像に結果を上書きしてしまうため注意が必要である。この手引きの手順に従うと、ダークを差し引いたファイルを規格化するので、オリジナルのフラットフレームが上書きされる心配ない。

ecl> normalize @flat-sub.list

 ここで @flat-sub.list はリストファイルで、(2)で出力に指定したリストファイルを指定する。

 規格化された結果、以下のようにすべてのフラットフィールドの平均カウントが 1.0 になっている。

ecl> imstat @flat_B_sub.list
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
 stl.00040066.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03192    0.8068     1.118
 stl.00040067.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03192    0.8074     1.259
 stl.00040068.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03192    0.8086     1.089
 stl.00040069.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03193    0.8013     1.079
 stl.00040070.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03192    0.8075     1.077
 stl.00040071.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03194    0.8052     1.35
 stl.00040072.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03196    0.7986     1.079
 stl.00040073.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03195    0.8043     1.218
 stl.00040074.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03196    0.8031     1.182
 stl.00040075.FLATs.FIT   1048576        1.   0.03197    0.8021     1.081

(4)フラットフレームの合成

規格化したフラットフレームをメディアンで合成する。

ecl> imcombine @flat-sub.list flat.FIT combine=median

 @flat-sub.list はリストファイルで、(3)で規格化した flat-sub.list を指定する。

 flat.FIT は最終的に得られるフラットフレームのファイル名である。

3 オブジェクトフレーム補正

(1)ダークフレームの合成

 オブジェクトフレーム(小惑星を撮像したフレーム)の補正用ダークフレームを合成する。

 まず、ダークフレームの統計値を調べて異常値のフレームがないことを確認する。異常な値のフレームは合成に用いない。ただし、ここで @dark120sec.list とはリストファイルで、dark120sec.list というファイルに合成するダークフレームのファイル名(10枚程度)を書き込んでおく。

ecl> imstat @dark120sec.list  
#               IMAGE      NPIX      MEAN    STDDEV       MIN       MAX
 stl.00039826.DARK.FIT   1048576     131.4     41.43       37.    21990.
 stl.00039827.DARK.FIT   1048576     130.2     40.08       37.    22046.
 stl.00039828.DARK.FIT   1048576     130.1     39.63       44.    21946.
 stl.00039829.DARK.FIT   1048576     129.3     40.11       38.    21787.
 stl.00039830.DARK.FIT   1048576     128.9     38.11       35.    21920.
 stl.00039831.DARK.FIT   1048576     129.1     39.41       34.    21817.
 stl.00039832.DARK.FIT   1048576     129.1     39.82       40.    21959.
 stl.00039833.DARK.FIT   1048576     130.1     41.78       27.    21976.
 stl.00039834.DARK.FIT   1048576     130.1     40.05       24.    21838.
 stl.00039835.DARK.FIT   1048576      129.      38.9       40.    22037.

 次に、オブジェクトフレーム補正用ダークフレームをメディアンで合成する。

ecl> imcombine @dark120sec.list dark120sec.FIT combine=median

 dark120sec.FIT とは結果が出力されるファイル名である。

(2)ダークフレームの差し引き

 すべてのオブジェクトフレームから(1)で合成したダークフレームを差し引く。

ecl> imarith @object.list - dark120sec @object-sub.list

 @object.list はリストファイルで、object.list というファイルに小惑星を撮像したすべての画像ファイル名を書き込んでおく。

 dark120sec.FIT は(1)で出力したダークフレームのファイル名を指定する。ただし、拡張子は省略できる。

 @object-sub.list はリストファイルで、object-sub.list というファイルにダークフレーム差し引き後のファイル名を書き込んでおく。このファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに s を自動で付けて出力とする。(xterm で実行すれば!マークは不要)

ecl> !cat object.list | sed -n 's/.FIT/s.FIT/p' > object-sub.list

(3)フラットフレーム補正

合成済みのフラットフレームで、すべてのオブジェクトフレームを割る。

ecl> imarith @object-sub.list / flat @object-flat.list

 @object-sub.list はリストファイルで、(2)でダークを差し引いた object-sub.list を指定する。

 flat-dark.fits は 3(4)で出力したフラットフレームのファイル名を指定する。ただし、拡張子は省略できる。

 @object-flat.list はリストファイルで、object-flat.list というファイルにフラットフレーム補正後のファイル名を書き込んでおく。このファイルの作成は以下のコマンドにより自動化できる。このコマンドでは、元の画像ファイル名の後ろに f を自動で付けて出力とする。(xterm で実行すれば!マークは不要)

ecl> !cat object.list | sed -n 's/.FIT/f.FIT/p' > object-flat.list

III 測光

1 比較星の選択

 比較星はオブジェクトフレーム内の恒星から複数個(できれば10個程度)を選択する。比較星の条件は以下のとおり。
・ ピークがリニアリティーの範囲内にあること
・ 十分なカウントがあること
・ 周囲に暗い恒星がないこと
・ すべてのオブジェクトフレームに共通に写っていること
・ 理想的には太陽と似たカラーの星であること

※リニアリティーの詳細はリニアリティーのページを参照。

※測光用フィルターを使用しないで観測をした場合の比較星の選択方法についてはノーフィルター観測についてを参照のこと。

【DS9での比較星のマーキング】

 DS9では、画像上で比較星にマークをつけることができる。上手に利用すると測光に便利である。以下、その手順を示す。

 DS9のメニュー「edit」→「pointer」を選択してから、比較星にマウスカーソルを合わせてシングルクリックすると、緑色の円形のマークが付く。マークのサイズは、マーク内をシングルクリックしてマウスで変更できる。さらにマークの色や形は上部メニュー「Region」の「Sharpe」や「Color」で変更できる。

 次に、マーク内でダブルクリックすると、以下のダイアログボックスが開き、「Text」に例えば比較星の番号を入力して「Apply」、「Close」とクリックすると画像上に番号が表示される。筆者は比較星を赤経順に番号を付けて識別している。

 このようにして、すべての比較星にマークをつける。3つの比較星にマークをつけた状態を次に示す。

 また、観測中にCCDの視野がずれる場合がある。その場合は比較星のマークがずれるが、上部メニュー「Region」→「Select All」をクリックすると、すべてのマークが選択され、それらをマウスで一斉に移動できるので、再度、比較星に重ねることが可能である。

 さらに、上部メニュー「Region」→「Save Template」を選択すると、すべてのマークとテキスト(番号等)の情報をまとめて保存できる。それらは「Region」の「Load Template」で読み出すことができる。

2 FWHMの測定

 まず、imexamine コマンドを用いて、星像のFWHM(半値幅)を求める。

cl> disp fie_name
cl> imexa fie_name

 ※ 現在表示している画像に対して imexa コマンドを適用する場合は、imexa コマンドでファイル名の指定を省略できる。つまり、単に imexa とだけ入力すれば良い。

 測定する星像にマウスカーソルを当てて r キー(小文字の R )を押すと、以下のように画像のプロファイルが表示される。

 また、測定する星像にマウスカーソルを当てて a キーを押すと xgterm ウインドウに以下の情報が表示される。比較星を a キーにより次々に測定して、そのFWHMの平均値を求める。実際にはこちらの方法で比較星を選択する。

 IRAF の場合 FWHM の値として ENCLOSED, MOFFAT, DIRECT の3種類が表示される。このうち MOFFAT は Gussian より裾が広がり、より実際の星像に近いプロファイルだそうだが、明るい星の場合はそれぞれの差は小さい。どの値を利用するか自分のやり方を決めておくのが良いだろう。私の場合は ENCLOSED の値をざっと平均している。このサンプル画面の場合では 2.1 ピクセルとしている。

 測定が終わったら、画像にマウスカーソルを置いたまま、q キーを押して imexamine を終了する。

 imexamine の主なコマンド(実際にやってみれば理解できるであろう)

 a: apertuer sum,moment parameters,and gaussian fit
 c: column plot
 l: line plot
 e: contour plot
 h: histogram plot
 q: quit
 r: radial profile plot
 s: surface plot

3 パラメータの設定

 測光は IRAF の apphot コマンドを用いる。この apphot は多くのパラメータを適切に設定することが必要である。apphot では5つの画面を切替えてパラメータの編集を行う。ここでは最初に phot パラメータ画面に入り、そこから別の画面に移行する方法を紹介する。

 まず、epar phot コマンドを実行する。

ecl> epar phot

 まずこの画面では radplot の初期値が no となっているので、yes に修正する。

 次に画面の datapar の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e (コロンと e )と入力すると下の datapar の編集画面に移行する。

 この画面では fwhmpsf の値として imexamine で調べた FWHM の平均値を入力する。(この値は毎回修正する)

 さらに、画像のFITSファイルのヘッダにこれらの値が記録されている場合、個々に値を入力せずに、ヘッダのキーワードを指定するだけでヘッダから自動的に値が読み込まれるので便利である。

 特に exposur= を登録しておくと、測光結果の FLUX を単位時間(1秒)当たりのカウント値として出力される。これは標準星などを異なる積分時間で撮像しても、常に単位時間当たりの FLUX が得られるので大変便利である。

 筆者は以下のキーワードを登録しているのが上の画面見本からもわかるだろう。

   (exposur=             EXPOSURE) Exposure time image header keyword
   (airmass=                     ) Airmass image header keyword
   (filter =               FILTER) Filter image header keyword
   (obstime=             TIME-OBS) Time of observation image header keyword

 SBIG STL-1001E + CCD Soft で作成される FITS ファイルのヘッダ(抜粋)は以下のようになっている。

   TIME-OBS= '13:32:50.899        '
   FILTER  = 'R                   '         
   EXPOSURE= +6.000000000000e+001         

 次に datamin と datamax を入力する。datamax はリニアリティーの保証範囲をカウントで入力する。保証範囲が不明な場合は30000くらいを入力するのが無難であろう。datamin は、読み出し雑音の3倍くらいの負の値を入力すればよい。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

 次に画面の centerp の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の centerp の編集画面に移行する。

 この画面では cbox の値として FWHM の 2 倍程度の値を入力する。maxshif は 2 ピクセルを入力する。これらの値は適当でよい。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

 次に画面の fitskyp の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の fitskyp の編集画面に移行する。

 この画面では annulus (スカイの内経)と dannulu (スカイの幅)を入力する。annulus はこの次の画面で入力する apertur サイズに 1.0 を加えた値とする。(この値は毎回修正する)

 dannulu は 3〜5 の範囲の値とする。普通は 5 のままとして、星が密集している場合はスカイに他の星が入らないように小さい値とする。

 編集が終ったら :q と入力すると最初の phot 画面へ戻る。

 次に画面の photpar の行に矢印キーでカーソルを移動してから :e と入力すると下の photpars の編集画面に移行する。

 この画面では apertur の値を入力として FWHM の平均値の 1.5 倍の値を入力する。(この値は毎回修正する)

 小惑星が移動により楕円に写っている場合などは、1.5 倍より若干大きめにする。ただし、アパーチャー内にスカイが入り込むため測光誤差が大きくなるが、しかたがないだろう。

 一方、比較星の場合は FLUX が十分にあるので常に 1.5 倍で問題はない。比較星が楕円の場合は星像の裾がカットされることになるが、FLUX が十分にあれば誤差の範囲内である。

 次に、zmag は 0.(ゼロ)を入力する。初期値は 25 であり、25 だと測光値として妥当な等級が出力される。これを 0 にするとマイナスの等級が出力される。しかし、本来 zmag (zero point) は観測ごとに決定すべき値であるため 0 にするのが妥当である。

 編集が終ったら :q を2回押すとパラメータ編集を終了する。

4 実際の測光

 パラメータの設定が終了したら apphot コマンドを用いて測光を行う。ファイル名の拡張子は省略できる。

ecl> phot image.fits

 ただし、測光のたびに epar コマンドでパラメータを変更するのは面倒なので、phot コマンドの引数に fwhmpsf, apertur, annulus 等を指定する方法があり便利である。

ecl> phot image.fits fwhmpsf=2.1 apertur=3.2 annulus=4.2

 次に、画像の測定すべき星像にマウスカーソルを当てて、スペースキーを押すと、以下のような星像のプロファイルが表示される。

 また、IRAF を実行している xgterm には簡単な測定結果が表示 されて、測定がうまく行われているかの確認ができる。

 ok の部分が err となった場合は、マウスカーソルを星像に重ねるのに失敗したり、明るい星で datamax の値を越えた場合など何らかの問題があるのでチェックする必要がある。

測光を終了する時は、画面にマウスカーソルを置いて q キーを押し、続いて xgterm にマウスカーソルを置いて q キーを押す。

 より詳細な測光結果が以下のような名称のファイルに出力される

 w153040c.fits という画像ファイルを3回測定した場合

 w153040c.mag.1
 w153040c.mag.2
 w153040c.mag.3

 このような名称のファイルが作成される。測光を繰り返した場合、測光結果ファイルは上書きされずに、ファイル名の最後の連番が繰り上がる。このため、測光に失敗てやり直す場合は、ファイル名が変わってしまう。後処理の自動化等でこれを嫌う場合は、失敗した時はこのファイルを削除してからやり直すと良い。

VI 結果の整理

1 測光結果の取り出し
 測光結果ファイルから必要な項目を取り出すには以下の IRAF コマンドが利用できる。

cl> txdump *.mag.1 XCENTER,YCENTER,FLUX,MAG,MERR yes

 また、時刻の情報を FITS ファイルのヘッダから取り出して、結果のデータファイルを作成する。

 これらの処理を行うプログラム(スクリプト)を用意すると効率的に作業が行える。

2 比較星の測光結果の確認

 *.mag.1 から得られた比較星の等級をそのままグラフにプロットする。このグラフから比較星の光度変化がわかり、おかしな変化をしている場合はその比較星をリジェクトする。

3 小惑星の等級の求め方

 任意の比較星と小惑星との等級差を小惑星の相対等級とする。または、すべての比較星の平均値との差を相対等級とする方法もある。(著者は常に後者のやり方をしている)

4 小惑星の誤差の求め方

 誤差は apphot の結果で得られるが、小惑星の誤差だけでなく比較星の誤差を加味した以下の式で求めることが望ましい。

 誤差 = √(x^2 + Σ(y^2)/n)

 ただし、x は小惑星の測定誤差、y は比較星の測定誤差、n は比較星の個数

5 ライトカーブのプロット

 得られた相対等級をプロットしてライトカーブを作成する。縦軸は比較星との等級差を、横軸は周期が求まっている場合は周期の位相、それ以外は観測時刻のUTにする。また、測定時の誤差をもとにエラーバーを付けるようにする。


一次処理コマンド一覧

この手引きに掲載した一次処理の各種コマンドを実行順に並べたものである。各自の環境に合わせて修正して利用して欲しい。

・フラットフレーム作成
 flat-dark.listの作成
 imcombine @flat-dark.list flat-dark.fits combine=median
 flat.listの作成
 !cat flat.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > flat-sub.list
 imarith @flat.list - flat-dark.fits @flat-sub.list
 noao
 imred
 generic
 normalize @flat-sub.list
 imcombine @flat-sub.list flat.fits combine=median

・オブジェクトフレーム補正
 (ダークフレーム合成)
 obj-dark.listの作成
 imcombine @obj-dark.list obj-dark.fits combine=median

 (ダークフレーム差し引き)
 object.listの作成
 !cat object.list | sed -n 's/.fits/s.fits/p' > object-sub.list
 imarith @object.list - obj-dark.fits @object-sub.list

 (フラットフレーム補正)
 !cat object.list | sed -n 's/.fits/f.fits/p' > object-flat.list
 imarith @object-sub.list / flat.fits @object-flat.list

 (向きの補正)
 !cat object.list | sed -n 's/.fit/f.fit\[\*,-\*]/p' > object_corr.list
 !cat object.list | sed -n 's/.fit/c.fit/p' > object_c.list
 imcopy @object_corr.list @object_c.list

   参考文献:IRAFクックブック「APPHOT」尾久土正己、天文情報処理研究会編


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